店舗の居抜き売却を行う理由は人それぞれです。
店舗経営が困難になり、泣く泣く物件を手放す場合や、早急にお金を用意しなければいけない場合などもあります。
また、居抜き売却では確かに利益を得られますが、費用も発生します。
今回は、居抜き売却時に発生する主な費用について解説します。
居抜き売却時に発生する主な費用4選
店舗の居抜き売却をする際は、主に以下のような費用がかかります。
・仲介手数料
・譲渡所得税
・印紙税
・承諾料
各項目について詳しく説明します。
仲介手数料
仲介手数料は、居抜き売買を仲介してくれる不動産会社に支払う費用です。
こちらは一般的な不動産売却でも発生する費用です。
ただし居抜き売却の場合、仲介手数料の取り扱いは一般的な不動産売却とは異なります。
なぜなら、居抜き売却については、まだ正確なガイドラインがないからです。
居抜き売却、つまり造作譲渡契約は、他の物件取引に比べて一般的には広まっていません。
そのため、各不動産会社が自社で一定のルールを決め、仲介手数料を設定しています。
一般的な不動産売却の場合、物件価格に応じた仲介手数料の上限が定められていますが、居抜き売却の場合はこちらのルールがありません。
場合によっては法外な金額を要求されることも考えられるため、十分に注意しましょう。
居抜き売却における仲介手数料は、30万円または売買金額の10%とされることが多いです。
ちなみに仲介手数料は、一般的に売主が負担するものですが、どちらが負担するのかについては買主と協議して決定することができます。
しかし買主に仲介手数料の負担を依頼する場合、なかなか購入希望者が現れない可能性があるため、注意が必要です。
譲渡所得税
譲渡所得税は、居抜き売却を行って得た利益に対して課せられる税金です。
正確にいうと、以下の計算式で算出された譲渡所得に対して課税されるものです。
居抜き物件を売却して得た利益-売却した物件を取得した金額(取得費+譲渡費用)
こちらの計算式で譲渡所得がプラスになった場合は、その利益に対して税金がかかります。
また譲渡所得のうち、土地や建物などを売却して得た利益は分離課税の対象になります。
ただし、造作の譲渡所得については異なります。
造作の譲渡所得は、給与所得や事業所得などの所得と合わせて総合課税の対象です。
また居抜き物件の造作は一式で売却するのが一般的ですが、種類によっては譲渡所得に該当せず、課税の扱いが変わるものもあります。
例えば原材料や使用期間が1年未満の減価償却資産などは、事業所得に分類します。
印紙税
印紙税は、居抜き売却を行うにあたり、買主と交わす契約書に貼付する印紙にかかる費用です。
他の税金は、後々納付書などで支払うこともありますが、印紙税は契約書を交わす際、収入印紙を貼付することで支払います。
ただし、動産の売買契約書においては、1回限りの取引であれば印紙は不要とされています。
そのため、居抜き売却における造作譲渡契約でも、印紙は必要としません。
しかし、居抜き売却も不動産に類する取引であることから、念のために印紙を貼るケースが多く見られます。
承諾料
承諾料は、居抜き売却を認めてもらうために、その物件のオーナーに支払う費用です。
賃貸物件で店舗経営を行っている場合、その物件の借主だけの判断で居抜き売却を行うことはできません。
物件の所有者はあくまでオーナーであるため、事前に許可を取る必要があります。
また、このときオーナーに承諾料の支払いを求められることもありますが、こちらは法律で定められたものではありません。
あくまで慣行として行われるものです。
しかし、承諾料を支払わなければ居抜き売却を許可してもらえない場合、居抜き物件の売主は基本的にその金額を支払うしかありません。
承諾料の金額は双方の話し合いで決定されますが、譲渡代金の10%が目安です。
これよりも明らかに高い金額を請求された場合は、もう一度協議し直すことをおすすめします。
ちなみに、オーナーから居抜き売却の許可が下りない場合、居抜き売却を実現するのは難しいです。
居抜き売却にかかる費用の注意点
居抜き売却に伴って発生した譲渡所得税については、受け取った金額に対して翌年課税される仕組みになっています。
そのため、売主は税金に当てる費用を残しておかなければいけません。
また造作等を引き渡した後も、売主は契約不適合責任を負うことになります。
こちらは一定期間を設け、その期間内に物件や設備の瑕疵が見つかった場合、補償しなければいけないという責任です。
このように、売却後に負担する費用は多々あるため、売主はそこまで計算に入れておかなければいけません。
まとめ
居抜き売却で利益を得ることが最大の目的である方は、事前に前述したような費用の存在を把握しておきましょう。
把握していなければ、思いの外手元に利益が残らず、売却益を別の費用に充てるのが難しくなる可能性もあります。
また税金や各種費用の支払いタイミングについてもそれぞれ異なるため、すべて整理しておかなければいけません。