店舗経営を行う方の中には、経営不振や体力の限界など、さまざまな理由によって廃業を検討している方もいるかと思います。
また、そのような方の選択肢の一つとして、居抜きによる売却が挙げられます。
ここからは、居抜き売却の概要と主なメリットを中心に解説したいと思います。
居抜き売却の概要
居抜き物件とは、内装や空調などの設備、什器などが営業していた状態のままになっている物件のことをいいます。
そして、このような居抜きの状態で、次の借主に物件を引き渡すことを居抜き売却といいます。
賃貸物件と自己所有物件とでは、居抜き売却に含まれる範囲が異なります。
賃貸物件の場合、次の借主に店舗造作の一式を譲渡して退去する一方で、自己所有物件の場合は、造作だけでなく、建物と土地も売却することも含め、居抜き売却と呼ばれます。
一般的には、賃貸物件による居抜き売却が行われるケースが多いです。
居抜き売却の主なメリットについて
居抜き売却によって廃業する主なメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
・売却コストが削減できる
・造作譲渡による追加利益の可能性がある
・直前まで店舗経営ができる
・解約予告期間中の賃料を削減できる
売却コストが削減できる
通常、賃貸物件での店舗経営を終了させるときには、原状回復工事や解体工事が求められ、そのための費用が発生します。
場合によっては、こちらの金額が前経営者の経済状況を大きく圧迫することもありますが、居抜き売却の場合、その状態のままで譲渡するため、これらの費用は発生しません。
もちろん、工事を行う手間も省けるため、前経営者の負担は大幅に軽減されます。
造作譲渡による追加利益の可能性がある
居抜き売却の方が、店舗を空室にしてから引き渡すよりも、高い収益を期待できます。
内装や厨房施設、調理器具などが付帯しているため、その物件には付加価値が付いているからです。
また、実際価格が付くかどうかは造作の状況によりますが、現在の在庫を一掃し、再スタートを切りたい方にとっては、処分費用をかけず、次の店舗開業のための軍資金を貯めることができるため、おすすめの方法です。
直前まで店舗経営ができる
居抜き売却を行う場合、前経営者は売買手続きが進行する間、店舗や設備を通常通りに使用し、営業することができます。
通常であれば、物件のオーナーに対して解約予告をしてから退去するまで、あるいは買主に引き渡すまでに、解体工事を実施しなければいけません。
一方、居抜き売却では、解体工事費用を気にすることなく、閉店後はすぐに買主に引き渡すことが可能です。
そのため、1日でも長く店舗を営業したいという方にとってはメリットがあります。
解約予告期間中の賃料を削減できる
店舗を廃業する場合、あらかじめ物件のオーナーや管理会社に解約することを伝えなければいけませんが、一般的には契約時に、3~6ヶ月の解約予告期間が定められています。
こちらは、オーナーに解約の旨を伝えてから、実際に解約、退去できるまでの期間を表しています。
また、前経営者は、実際に解約するまでの期間、賃料を支払い続ける必要があります。
これに対し、居抜き売却の場合は、後を継ぐテナントがすでに決定しているため、物件のオーナーにとっては、途切れることなく契約の継続が保証されています。
そのため、合意解約を承諾してもらえる可能性が高く、その分無駄な賃料が発生するのを抑えられます。
居抜き売却の一般的な流れ
前経営者にとってメリットの大きい居抜き売却は、一般的に以下のような流れで行われます。
・リース契約書、賃貸借契約書を確認する
・売却する不動産会社に相談する
・買主を募集する
・内見、現地調査を行う
・貸主の承諾を得る
・売却の条件交渉を実施する
・造作譲渡契約を締結する
・決済、引き渡しを実施する
まずはリース契約をチェックし、どの設備が売却できるのかを確認します。
その後、賃貸借契約書で解約予告期間を確認し、どのタイミングでオーナーに解約の旨を伝えるかを決定します。
また、不動産会社との打ち合わせを行い、居抜き売却が現実味を帯びてきたら、物件のオーナーから造作譲渡の承諾を得ましょう。
もし、断りなく居抜き売却を進めてしまったら、賃貸借契約に違反し、オーナーだけでなく、買主との間でもトラブルが起こる可能性があるため、注意が必要です。
ちなみに、造作譲渡契約については、物件のオーナーと前経営者、新しい経営者である買主の3者間でそれぞれ締結します。
具体的には、オーナーと買主が面会し、オーナーから許可をもらい、その後前経営者と買主で造作譲渡契約を結ぶという流れです。
まとめ
ここまで、居抜き売却の概要と主なメリットを中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
居抜き売却は、単純に売却の手間が省けるだけでなく、費用面においても多くのメリットがある方法です。
また、買主にとっても、スムーズに店舗経営を始められる方法であるため、魅力的な内装や設備が残っていれば、多くの買主が集まることも期待できます。