飲食店の居抜き売却を実施する場合は、必ず物件の貸主であるオーナーの許可を取らなければいけません。
しかし、許可が下りなかった場合には、当然実施するのが難しくなります。
では、オーナーが居抜き売却を許可してくれない理由には、主にどのようなことが挙げられるのでしょうか?
居抜き売却が許可されない場合の主な理由5選
居抜き売却の許可を得るため、オーナーに相談したにもかかわらず、断られてしまう主な理由としては、以下のことが挙げられます。
・売却後のトラブルに巻き込まれたくないから
・賃料を滞納しているから
・現在の店舗、共用部分の使用状況が悪いから
・賃貸借契約書に記載されているから
・すぐに借主が変わる可能性があるから
では、それぞれの詳細を見てみましょう。
売却後のトラブルに巻き込まれたくないから
物件のオーナーは、トラブルに巻き込まれたくないことを理由に、居抜き売却を許可してくれないことがあります。
例えば、居抜き売却が行われた後、新しい借主から「造作部分を修繕してほしい」「配管を修理してほしい」といった要望が出ることがありますが、多くのオーナーは、できる限りこのような費用も手間もかかることは避けたいと考えます。
また、旧借主の居抜き売却が許可されても、新借主の居抜き売却が同じように認められるとは限りません。
オーナーは、新しい借主に対し、原状回復を義務付けているにもかかわらず、前の借主が居抜き売却をしてしまうと、こちらの義務がうまく伝わらず、トラブルに発展することもあります。
このような状況を回避したいという場合も、オーナーは簡単には居抜き売却を認めてくれません。
賃料を滞納しているから
経済的な理由により、すぐにでも居抜き売却を実施したいという借主もいるでしょう。
しかし、すでに深刻な困窮状態に陥っていて、店舗の賃料を滞納しているような場合は、オーナーの心象が悪く、居抜き売却を許可してもらえない可能性があります。
飲食店における内装や後付けの設備などに関しては、オーナーではなく借主の所有物となるため、売却すること自体は決して違法ではありません。
ただし、オーナーとの賃貸借契約書をしっかりと守っていないにもかかわらず、居抜き売却だけ認めてほしいというのは、あまりにも虫が良すぎます。
そのため、許可してもらいたいのであれば、一切賃料の滞納を発生させないこと、滞納したとしてもきっちり支払った上で相談するようにしましょう。
現在の店舗、共用部分の使用状況が悪いから
貸主に店舗を貸し出すオーナーは、当然自身の所有物である物件を綺麗に使用してほしいと考えます。
また、テナントビルなど、複数の貸主に店舗を貸し出すオーナーの場合は、共用部分の使い方についても、厳しくチェックしていることが多いです。
そのため、あまりにも店舗や共用部分の使い方が悪い場合は、居抜き売却を許可してくれない可能性が高いです。
賃料を支払っていないケースと同じく、綺麗に物件や共用部分を使用しない借主は、オーナーの心象を悪くしてしまうからです。
賃貸借契約書に記載されているから
現物件への入居時、オーナーと交わした賃貸借契約書の中に、「居抜き売却を禁止する」という記載があることを理由に、借主の打診が断られてしまうケースがあります。
一般的に、飲食店における賃貸借契約では、このような事項が記載されているケースが多いため、注意しましょう。
また、契約に含まれていることを理由に断られた場合、借主は根気強く交渉するしかありません。
売却時、売却後において、オーナーに一切の手間をかけさせないこと、対応を求めないことなどを条件に交渉すれば、賃貸借契約書で禁止されている場合でも、許可してもらえる可能性はあります。
すぐに借主が変わる可能性があるから
居抜き売却は、同業種の借主に対して行われることが多いです。
例えば、焼肉店を経営する方が、同じ焼肉店もしくはそれに近い業種の経営者を探し、居抜き売却を行うようなケースです。
こちらの理由は、同じかもしくは似たような業種であれば、使用する設備や什器なども似通っているため、売却がスムーズに進んだり、需要と供給がマッチしたりしやすいからです。
しかし、“同業種への売却が多い”ということを理由に、オーナーが居抜き売却を許可してくれないというケースもあるため、注意しましょう。
なぜなら、現在の借主が経営に苦しんでいる場合、オーナーは同じ業種の借主に居抜き売却をしても、すぐに経営が悪化し、また借主が変わる可能性が高いと考えるからです。
オーナーからすれば、契約手続きや原状回復といった手間を考えたとき、コロコロと借主が変更になるのは避けたいため、こちらに関しては致し方ありません。
まとめ
居抜き売却を検討している飲食店経営者の方は、物件のオーナーが許可してくれないという可能性を必ず頭に入れておきましょう。
むしろ、賃貸借契約書で禁止されているケースが多いことを考えると、“許可されなくて当たり前”と思っていた方が良いかもしれません。
また、借主の普段の行動などによって、許可されるかどうかが変わってくることも忘れないようにしましょう。