居抜きについて学んでいたり、居抜きの物件情報を閲覧していたりすると、度々似ている言葉を目にすることがあります。
これらの言葉の意味を間違えると、正しい物件選びができなくなる可能性があるため、注意しましょう。
今回は、居抜き関連の間違えやすい用語をいくつか解説します。
“居抜き”と“残置”
居抜き関連の間違えやすい用語としては、まず“居抜き”と“残置”が挙げられます。
物件情報においては、どちらも目にする可能性があるため、この機会に覚えておきましょう。
居抜きとは、飲食店の経営に必要な以下のような設備が揃っている物件を指します。
・内装
・電気
・給排水
・空調
・厨房機器
・テーブル、イス など
つまり、新しく飲食店を開業したい方が、食材や調理器具、皿などを用意さえすれば、すぐにでもオープンできる状態だということです。
一方で残置とは、一般的に動かせるものがすべて撤去された状態をいいます。
具体的には、厨房機器やテーブル、イス、場合によっては空調設備まで取り外されている物件で、文字通り残って置いてある物件を指しています。
つまり、残置物件を借りたとしても、そのまますぐに飲食店を開業するのは難しいということです。
居抜き物件を選択するか、残置物件を選択するかでは、その後の対応が大きく変わってくるため、注意してください。
もちろん、実際現場に訪れれば、居抜き物件なのか残置物件なのかはすぐにわかるため、内見は欠かせません。
“居抜き物件”と“リース物件”
居抜き物件とよく似た形態の物件に、“リース物件”が挙げられます。
これらは非常に似通っているものですが、決して同じではありませんので、注意してください。
居抜き物件では、売主と買主の間で造作売買、無償譲渡などが行われます。
一方、リース物件の賃借人は、造作に対する所有権を持っておらず、あくまでリースという扱いになります。
そのため、居抜き物件のように造作を売却したり、交換したりすることは、基本的にはできません。
ただし、借主からすれば、設備等のメンテナンス、故障の際の対応などを代理で行ってもらえたり、内装工事、機器の購入にかかるイニシャルコストを抑えられたりするメリットもあります。
ちなみに、こちらの契約形態を採用する物件は、主にスナックやクラブ、バーといった業種を前提とした“ソシアルビル”などによく見られます。
“営業譲渡”と“飲食店舗付属資産譲渡”
“営業譲渡”と“飲食店舗付属資産譲渡”も、物件情報などで見られる間違えやすい用語です。
営業譲渡は“営業権譲渡”とも呼ばれるものであり、店舗が営業している状態で、従業員や造作、資産をまとめて譲渡する契約をいいます。
契約自体を引き継ぐものであるため、法人の場合は代表者変更、個人の場合は名義変更をしなければいけません。
一方、飲食店付属資産譲渡とは、賃貸借契約を新たな賃借人と賃貸人で結び、その契約対象物件内にある内装、厨房機器、什器の譲渡契約については、新賃借人と旧賃借人との間で締結することになります。
一般的に“居抜き売買”という場合、こちらの飲食店舗付属資産譲渡を指すことが多いです。
これらの違いを知っていないと、居抜き売買において造作のみを引き渡すはずだった売主が、実は従業員やその他の資産などもまとめて譲渡しなければいけないことを知り、買主とトラブルを起こしてしまう可能性もあるため、注意しましょう。
“転貸”と“業務委託”
居抜き物件を借り、飲食店を経営しようと考える方は、“転貸”と“業務委託”の違いについても把握しておきましょう。
転貸とは“転貸借”とも呼ばれるもので、賃貸人から建物を借りている賃借人から第三者に対し、再度目的物が賃貸されることを指しています。
つまり、他人から借りている物件を、まるで自身の所有する物件のように貸し出すのが転貸だということです。
この行為は、原則賃貸借契約では禁止されています。
一方、業務委託とは、居抜き物件における借主が、第三者に店舗の経営を委託することをいいます。
転貸のように貸し出すわけではないにしろ、当初の契約とは異なる人物が賃貸物件を使用しているという事実は同じです。
また、賃借人と第三者との間の業務委託の具体的内容によっては、業務委託でも転貸と評価される場合があります。
例えば、受託者(賃借人から店舗経営を受託している第三者)が、自己の計算で経営を行っている場合、飲食店の営業許可を取得している場合、飲食店の収益にかかわらず受託者から賃借人へ毎月一定額の金銭を交付している場合などは、業務委託という形式を取っていたとしても、転貸と判断される可能性が高いため、特に行ってはいけません。
まとめ
ここまで、居抜き関連の似通った用語の違いについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
これらの用語の意味を知っておけば、物件選びや契約において、トラブルに巻き込まれる可能性を多少は下げることができます。
また、他にもわからない用語があるという方は、実際居抜き物件の売買を行う前に、詳しい意味を理解しておきましょう。