居抜き物件のリノベーションと聞くと、内装を変えたり、希望する設備を追加したりする工事を想像する方が多いかと思います。
ただ、居抜き物件を賃貸ではなく購入する場合、耐震リノベーションをしなければいけないこともあります。
ここからは、居抜き物件の耐震リノベーションの流れや費用などについて解説します。
居抜き物件の耐震リノベーションにおける一般的な流れ
居抜き物件の耐震リノベーションは、一般的に以下のような流れで行われます。
①耐震診断
業者や専門家に依頼し、耐震補強が必要かどうかの診断を行います。
ちなみに、耐震診断には、目視で外観からのチェックを行う一般診断、建物内部の構造まで細かくチェックする精密診断があります。
②診断結果報告、補強計画提案
診断の結果、工事を行う必要があると判断される場合は、業者がどこを補強するのか、どのような方法で補強するのかを決定します。
③契約
業者の提案するプラン、スケジュール、費用を確認し、内容に納得した上で契約します。
④耐震補強工事
計画に基づき、耐震補強工事をスタートさせます。
小規模な工事であれば、契約と同時に進めてもらうことができますが、大規模な場合、施主は完了まで入居を待つことになります。
⑤工事完了
耐震補強工事完了後には、多くの場合で保証書が発行されます。
そのため、後々何かしらの不具合があっても、フォローしてもらえるケースがほとんどです。
居抜き物件の耐震リノベーションにおける費用について
居抜き物件の耐震リノベーションにかかる費用は、150万円前後です。
こちらは、数ある工事の中でも高額な部類に入ります。
ただし、こちらはあくまですべての物件の平均的な金額であり、実際の価格は建物の築年数、規模などによって異なります。
目安は以下の通りです。
築年数・床面積 60㎡未満 60~80㎡ 80㎡以上
築19年以下 約95万円 約94万円 約97万円
築20~29年 約120万円 約130万円 約150万円
築30~39年 約150万円 約160万円 約195万円
築40年以上 約130万円 約200万円 約250万円
一部だけ耐震リノベーションをするのは可能なのか?
耐震リノベーションは、屋根や壁など、居抜き物件の一部にのみ施すことも可能です。
ただ、一部のみの耐震工事を施しても、その物件が十分な耐震性能を得られるとは限りませんので、注意してください。
つまり、「費用を抑えたいから」という理由で、一部しか工事をしないというのはNGだということです。
また、部分的な耐震リノベーションは、しっかりと優先順位を守って行うこともポイントです。
一般的に、居抜き物件の耐震リノベーションにおける優先順位は、以下のように決まっています。
・壁の配置バランス整備
・壁の分量、強度補強
・屋根の軽量化
・基礎の補強
つまり、壁の強度が高くない状態で屋根の軽量化を実施するなどすると、建物全体におけるバランスが崩れ、かえって脆い物件になってしまうということです。
居抜き物件の耐震リノベーションにおける工期について
居抜き物件における耐震リノベーションの工期は、規模や工事方法などによって異なります。
簡単な工事であれば、1日~3日程度で終わることもありますが、大規模なものは1ヶ月程度かかることも考えられます。
例えば、基礎を補強する場合、床材を新しいものに張り替えるなどの工事は、工期が長期に及ぶ可能性が高いです。
また、正確にいうと耐震リノベーションではありませんが、建物と基礎との間に免震装置を設置し、地盤と切り離すことで、建物に地震の揺れを直接伝わらなくする免震リノベーションの場合も、工事には時間がかかることが予想されます。
居抜き物件の耐震リノベーションにおける助成金制度について
耐震診断を義務付けられた建物の所有者が実施する耐震リノベーションについては、国が事業に要する費用の一部を助成する“耐震対策緊急促進事業”の対象になります。
助成される金額については各自治体によって異なり、かかった費用に対する割合が定められているものもあれば、限度額150万円など、上限金額が定められているものもあります。
ただし、すべての自治体において助成金制度が設けられているわけではないため、自身が居抜きで飲食店を開業するエリアの情報については、事前にチェックしておきましょう。
また、ここでいう耐震診断を義務付けられた建物には、要緊急安全確認大規模建築物というものが含まれていて、居抜き物件などの店舗はこちらにカテゴライズされることが多いです。
ちなみに、耐震対策緊急促進事業の対象になる耐震リノベーションとは、具体的には耐震診断、補強設計、耐震改修あるいは超高層建築物等の所有者が長周期地震動対策として実施する詳細診断、補強設計、改修工事を指しています。
まとめ
ここまで、居抜き物件の耐震リノベーションの流れや費用、その他の細かいことについてあれこれ解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
居抜き物件における工事の予算を組む際、耐震補強工事のことを計算に入れ忘れるというケースは、決して少なくありません。
また、耐震リノベーションの費用は高額なため、計算に入れ忘れると、リノベーション全体の予定が一気に狂ってしまいますので、注意してください。