居抜き物件を売却する際、売主は買主と造作譲渡契約を交わします。
このときに使用されるのが造作譲渡契約書であり、こちらは居抜き売却の際に初めて概要を知るケースがほとんどです。
ここからは、造作譲渡契約書の概要や必要性、記載する項目などについて詳しく解説したいと思います。
造作譲渡契約書の概要
造作譲渡契約は、居抜き物件における内装や設備、備品といった造作物を譲り渡すという契約です。
そして、こちらの契約で用いるのが造作譲渡契約書です。
居抜き物件では、売主が残した造作物について、多くがそのままの状態で買主に引き渡します。
一方、通常の賃貸物件における前借主の退去、新借主の入居は、一度物件の中を空にするスケルトン状態にしてから行われるため、設備などの譲渡は行われず、造作譲渡契約書も作成されません。
造作譲渡契約書の必要性について
居抜き物件を売却するにあたって、造作譲渡契約書を作成しなければいけない理由としては、主に以下のことが挙げられます。
・譲渡価格、譲渡項目を明確にするため
・原状回復義務がどこにあるかを明確にするため
・契約不適合責任を明確化するため
・固定資産として計上するため
造作譲渡契約書には、売主から買主に譲渡するものと範囲、金額を明確にするという重要な役割があります。
また、売主は造作譲渡契約を結ぶ代わりに、原状回復義務を負わないため、引き渡し後のトラブルによる契約不適合責任を負わないためにも、造作譲渡契約書によってその旨をハッキリさせておかなければいけません。
ちなみに、造作譲渡契約書は、買主が設備を固定資産として計上する際の証拠にもなります。
売主から見ても、固定資産評価額に対し、高く売却できた場合は所得となるため、経営処理に必要な書類だと言えます。
造作譲渡契約書の必須項目
居抜き売却で作成する造作譲渡契約書には、必ず以下のような項目についての記載が必要です。
・譲渡するものと各造作の譲渡料
・造作譲渡の支払い期日と引き渡し期日
・支払い方法
・支払い遅延
・原状回復義務
・契約解除
・オーナーの承諾
居抜き物件の売主は、物品ごとに造作譲渡料を決定し、書面で買主に通達します。
こちらのリスクは、買主に対し何にいくらかかっているのかの内訳を説明するときに便利です。
また、契約書には必ず造作譲渡の支払い期日、引き渡し期日も記載します。
こちらが明確になっていることで、“言った、言わない”のトラブルを防ぐことができます。
造作譲渡の支払い方法についても、忘れずに記載しましょう。
その他、もし買主による造作譲渡の支払いが遅延したら、どのような処置を取るのかを明記しておくことも大切です。
例えば、契約を白紙に戻す、違約金が発生するなど、あらかじめ取り決めておくことが望ましいです。
さらに、オーナーが最終的にスケルトン状態での返却を求めている場合、その義務は誰にあるのか、造作譲渡の契約解除期日、条件なども明確にしておけば、造作譲渡契約においてトラブルが発生するリスクはかなり軽減します。
ちなみに、売主は居抜き物件を売却する際、つまり造作譲渡契約を結ぶ際、必ず物件のオーナーの許可を取らなければいけませんが、許可を取っているという旨についても、造作譲渡契約書で買主に伝えることをおすすめします。
許可を取っていない、もしくは取っているか買主に伝わっていない場合、売主と買主だけでなく、オーナーまで巻き込んだトラブルにつながりかねません。
造作譲渡契約においてよくあるトラブル
居抜き物件の造作譲渡契約では、不用品に関するトラブルがよく発生します。
例えば、売主が“○○設備一式”として譲渡したものの中に、不用品が混ざっている場合、買主は必要のないものに費用を費やすことになるため、トラブルが発生する可能性は高いです。
このようなトラブルは、造作譲渡契約書に“〇年以内に故障した場合は、売主が修理代金を支払う”などと記載することで回避できます。
また、売主はそもそも、不用品を買主に売却してしまわないように、事前にすべての設備や什器などについて、故障がないかどうか確認しなければいけません。
このとき、耐用年数もきちんと確認することで、今後の故障のリスクについても把握できます。
ちなみに、譲渡する造作の中にリース品が含まれていないかについても、売主が必ずチェックしなければいけない点です。
リース期間が残っている場合、造作譲渡を行った買主にリース契約を引き継いでもらうことになります。
もし、しっかり確認せずに処理していると、リース品とは知らず新品に交換してしまったり、買主に売却してしまったりするおそれがあります。
まとめ
ここまで、居抜き売却時に必ず作成する造作譲渡契約書について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
こちらの契約書がなければ、トラブルなく居抜き物件の売買を完了させることは不可能に近いです。
そのため、売主は不動産会社や物件のオーナー、買主などと協力しながら、スムーズに売買を進められるような造作譲渡契約書を作成しましょう。