店舗の居抜き売却では、物件そのものはもちろん、設備についてもあわせて買主に譲渡します。
また、設備譲渡の際に問題になりやすいのがリース品です。
リース品は、売主が所有する設備とは違った扱いをしなければいけません。
今回は、居抜き売却に伴うリース品の取り扱いについて解説します。
リース品とレンタル品の違い
居抜き売却を行う際は、まずリース品とレンタル品の違いを明確にしておきましょう。
これらの違いを知らない方は意外と多いです。
リース品は、所有者である企業が利用者に対して賃貸する設備です。
レンタル品も同じような意味ですが、リース品はレンタル品とは違い、途中解約ができません。
レンタル品の場合、必要がなくなった場合いつでも解約できますが、リース品には契約期間があります。
契約期間の途中で解約することはできません。
やむを得ず途中解約をする場合は、残額の一括支払いが必要になります。
そのため、常に残額を把握しておくことが大切です。
また、リース品とレンタル品とでは、保守に関する違いもあります。
レンタル品における保守の責任は、設備を賃貸する企業側にあります。
一方リース品は借りる側、つまり店舗経営者の方にあるため、故障などがあった場合は修理代がかかることが考えられます。
居抜き売却のリース品の処分方法
居抜き売却時、リース品を処分する方法には主に以下の4つがあります。
・撤去
・買い取り
・買主への譲渡
・残額の分割払い
各方法について詳しく説明します。
撤去
居抜き売却における譲渡物として取り扱わず、事前に撤去する方法です。
ちょうど契約期間の満了と重なっていれば、そのタイミングでリース契約を解約し、リース会社に返却できます。
しかし、店舗売却と契約満了の期間が重なる可能性は低く、大半は残額を一括清算してから撤去することになります。
また事前にリース品をすべて撤去すれば、その後の居抜き売却において、リース品に関するトラブルが発生することはありません。
物件内にある設備はすべて売主の所有物となるため、買主にも安心感を与えられます。
買い取り
リース会社からリース品を買い取り、売主の所有物として居抜き売却の際に譲渡する方法です。
売主の所有物になれば、当然元々所有していた設備と同じように扱えます。
また、リース品の買い取り相当額は、居抜き売却の価格に上乗せできます。
そのため、居抜き売却に成功すれば、買い取りにかかった費用は回収することが可能です。
ただし、この方法を実践するには、事前に買い取り費用をリース会社に支払う必要があります。
先に所有権だけを得て、居抜き売却の売却益をリース品の買い取り費用に充てるということは基本的にはできません。
もちろん、買い取りはあくまで、リース会社に許可が得られた場合のみ可能です。
買い取りを拒否された場合、売主の所有物にすることは難しいです。
買主への譲渡
リース品を買主に譲渡し、リース契約もそのまま引き継ぐという方法です。
リース品は、リース会社が賃貸するものであるため、無断で売却したり、破棄したりすることはできません。
一方リース契約をそのまま引き継ぐ場合、特にリース会社にデメリットはないため、許可される可能性が高いです。
ただし、売主が締結できたリース契約について、買主も締結できるとは限りません。
買主が属性などの契約条件を満たしていない場合、こちらの方法は使えないことが考えられます。
また、買主が契約条件をクリアしていない場合には、連帯保証人が必要になることがあります。
こういった場合の連帯保証人は、前契約者である居抜き物件の売主が務めるケースも見られます。
残額の分割払い
リース品の途中解約を行うには、基本的に残額を一括払いしなければいけません。
しかし、居抜き物件の売主が費用を用意できない場合、分割の支払いに応じてくれるリース会社もあります。
このようなケースでは、売主は事前にリース品を撤去した状態で居抜き売却ができ、売却後は完済まで残額を支払い続けます。
また残額の分割払いは、一括払いができない場合だけでなく、居抜き物件の買主がリース品の受け取りを拒んだ場合などでも活用できます。
リース品に関する説明は徹底すべき
居抜き売却においては、買主に対しリース品に関する説明を徹底的に行うべきです。
どの設備がリース品なのかはもちろん、現況のまま引き継ぐ場合は残額や契約期間なども説明しなければいけません。
また、居抜き売却の交渉段階で、リース品に関する条件を変更するのはNGです。
例えば最初は譲渡対象に含んでいたにもかかわらず、直前になって撤去するといった行動は、破談につながります。
まとめ
居抜き売却をスムーズに進めるには、売主自身がその物件のことを隅々まで把握しなければいけません。
そうしなければ、購入希望者が見つかったとしても、リース品を含む設備の取り扱いがうまくできません。
また、リース会社に無許可で設備を売却したり、買主にリース品であることを通知しなかったりすることにもつながります。