飲食店に関する法律には、食品衛生法や風営法、消防法などさまざまなものがあります。
また、今回解説する“景品表示法”も、飲食店において重要な法律の1つです。
今後、居抜きで飲食店を開業するのであれば、こちらの景品表示法という法律がどのような法律なのかについて、必ず把握しておきましょう。
居抜きの飲食店において重要な景品表示法とは?
居抜きの飲食店において重要な景品表示法とは、提供する商品またはサービスの価格、品質を偽って表示するなど、来客の誤認を生むような行為を制限、禁止している法律のことをいいます。
居抜き開業など、飲食店において、コストを最小限に抑えながら売上を伸ばすということは、とても重要です。
しかし、コストを抑えながら売上を伸ばすことに意識を集中させすぎるあまり、景品表示法に違反してしまうというケースは少なくありません。
もちろん、故意に違反することはもっての外であり、たとえ来客を騙すつもりがなくとも、誤認を生むことになってしまえば、その行動は景品表示法違反にあたります。
居抜きの飲食店が景品表示法に違反するとどうなる?
居抜きの飲食店が景品表示法に違反した場合、消費者庁から課徴金の支払いが命じられます。
課徴金とは、簡単に言えば罰金のようなものであり、こちらは刑罰でなく行政処分という扱いになるため、裁判所の判決なく発動されます。
支払う金額については、違反した商品、またはサービスによって得た売上の3%とされており、違反から3年間を上限にさかのぼって課徴されます。
ただし、自ら違反していることを申し出た飲食店は、課徴金額を半額にまで減額してもらうことができます。
また、課徴金の支払いが命じられた際、飲食店には弁明の機会が与えられます。
つまり、「景品表示法に違反していることを知らなかった」という主張ができるということです。
こちらの主張によって、消費者庁に言い分を認められた場合は、課徴金を支払う必要がありませんが、消費者庁は課徴金の支払い命令に至るまで、数々の調査を行っているため、「知らなかった」という主張は基本的には通らないと考えて良いでしょう。
ちなみに、居抜きの飲食店が景品表示法違反をしてしまうと、処分内容がインターネット上に公開され、店名や商品名を検索した方の目にもつきます。
その結果、実際はただの知識不足が原因の処分であっても、世間からは粗悪店であるかのような印象を持たれてしまい、経営の重大な障害になる可能性も否定できません。
どのような表示が景品表示法違反にあたるのか?
では、居抜きの飲食店は、一体どのような表示をしたら景品表示法違反になってしまうのでしょうか?
具体的には、以下のような表示が景品表示法違反に該当します。
・優良誤認
・有利誤認
・不実証広告
優良誤認
来客に対して、実際のものよりも良いものだと表示すること、または事実に相違して、類似商品、類似サービスよりも良いものだと表示することを優良誤認と言います。
例えば、“牛100%”と表示しているにも関わらず、実際は豚をミックスさせていた場合や、“国産和牛”と表示しているにも関わらず、オーストラリア産の牛肉を使用していた場合などが該当します。
また、メニューには大盛りに見える写真が掲載されているにも関わらず、実際は明らかに少ない量が提供されるといった場合も、違反の対象となることがあります。
有利誤認
来客に対し、商品やサービスの価格などが実際よりも安いと誤認させることを有利誤認と言います。
例えば、“今だけのお得なセール”といった表示が、長期間に渡って表示され続けているような状況などが当てはまります。
また、安い商品やサービスにように表示しておいて、実際は他にも料金がかかるような場合もこれに該当します。
不実証広告
何の根拠もない効果、性能などを表示することを不実証広告といい、こちらも課徴金の支払い対象になります。
景品表示法違反にならないためには?
居抜きの飲食店が景品表示法違反にならないようにするには、経営者の方が消費者庁によって示されている以下のポイントを押さえておくべきです。
・景品表示法についての考え方を周知し、啓発すること
・法令順守の方針などを店舗で明確化させること
・表示に関する情報を確認すること
・表示に関する情報を店舗内で共有すること
・表示を管理する担当者を決定すること
・表示が正しいことを示す根拠を確認するために、必要な措置を取ること
・万が一不当な表示であることが発覚した際に、迅速かつ適切に対応すること
従業員が一丸となって対策を取ることで、飲食店における景品表示法違反のリスクは低くなります。
まとめ
ここまで、居抜きの飲食店において重要な法律である景品表示法について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
これから飲食店を居抜き開業する方は、売上の増加を突き詰めすぎて、景品表示法に引っかからないように注意しましょう。
また、景品表示法に違反すると、たとえ故意でなくとも課徴金の対象になってしまう可能性があるため、できるだけ多く違反のパターンを知っておくことも重要です。