開業費を節約するために、飲食店の居抜き開業を選択するという方は多いかと思います。
しかし、いくら居抜き開業といえども、ある程度のコストがかかることは覚悟しておかなければいけません。
ここからは、飲食店の居抜き開業費のうち、経費として認められるものについて解説したいと思います。
経費の概要
事業を行うために使用した費用を経費といい、こちらには当然居抜き開業費も含まれます。
開業費に該当する項目のコストが発生した場合には、開業費として資産項目に計上します。
また、このときには後々確認しやすいように、個別の支出ごとに記録しておくのが一般的です。
ただし、あまりにも項目が多く、すべての記録するのが困難だという場合には、明細書ごとに一括で開業費として記録しても問題ありません。
また、居抜き開業費を経費として計上する際に重要なのが、飲食店の開業日です。
飲食店における費用は、開業日を境に前後の扱いが変わってきます。
個人事業主の場合、開業届に自身で決定した開業日を記入し、そこから原則1ヶ月以内に、税務署へ開業届を提出しなければいけません。
開業日が明確になったら、開業日前に発生した費用を居抜き開業費として計上できるようになります。
飲食店の居抜き開業費で経費計上できるもの
飲食店の居抜き開業費のうち、経費として認められるのは主に以下の費用です。
・物件取得費
・工事費
・リサーチ費用
・試作用食材仕入れ費用
・各種手続き費用
・人件費
・宣伝広告費
・その他の費用
物件取得費
居抜き物件を契約する前(開業前)に発生した賃料、不動産会社に支払う仲介手数料に関しては、居抜き開業費として経費計上することが可能です。
工事費
建物の外装や内装工事費、設備の導入費といった費用も、居抜き開業費として経費計上することが認められています。
リサーチ費用
飲食店を居抜き開業する際には、事前にいくつかのエリアに足を運んだり、ライバルとなる店舗のリサーチを行ったりする必要があります。
このときにかかった交通費、関係者との打ち合わせ費用といったコストは、居抜き開業費に含まれます。
試作用食材仕入れ費用
飲食店で提供する料理を作るための食材仕入れ費用は、開業費には該当しません。
一方、開業前に試作メニューを調理したり、調理のシミュレーションを行ったりするために食材を仕入れた場合の費用は、居抜き開業費として経費計上することができます。
各種手続き費用
飲食店の居抜き開業を行う際には、さまざまな手続きが必要です。
例えば、保健所に対して行う営業許可申請は必須ですし、アルコールの提供や深夜営業を行うのであれば、警察署に深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を提出しなければいけません。
また、これらの手続きには費用がかかりますが、こちらは居抜き開業費の1つとしてカウントすることができます。
人件費
飲食店の居抜き開業を行う前には、キッチンやホールのスタッフを募集します。
このとき、求人誌などに情報を掲載する際には料金がかかりますが、こちらは居抜き開業費として経費計上が可能です。
また、開業までの準備期間には、接客や調理といったスタッフの研修を行わなければいけませんが、このときに発生する人件費も経費に含むことができます。
宣伝広告費
チラシやWeb広告、看板など、飲食店の居抜き開業前には何かしらの方法で宣伝広告を行いますが、このときにかかる費用は経費として認められています。
その他の費用
その他、飲食店の居抜き開業費として経費計上が可能なものには、以下が挙げられます。
・プレオープン費用
・メニュー、パンフレット、ポイントカード等の制作費
・ホームページの制作費 など
経費計上できない費用は?
飲食店の居抜き開業を目指す方の中には、開業前にかかった費用であれば、すべて居抜き開業費として経費計上できると思っている方もいるでしょう。
しかし、こちらの考えは正しくありません。
例えば、物件に入居する際に発生する敷金や礼金は、経費としては認められません。
敷金は、非常に金額の大きいものですが、基本的にはその物件を退去する際、オーナーから返却されます。
つまり、預かり金のような性質を持っていることから、居抜き開業費とは認められないということです。
また、礼金に関しては、敷金とは違い返却されることがない費用であるものの、経費計上ができなくなっています。
正確にいうと、礼金を支払ったタイミングでは、原則経費にはできません。
なぜなら、礼金は税務上の繰延資産に該当するものであり、居抜き物件を借りている期間にわたって、徐々に経費にしていかなければいけないからです。
まとめ
ここまで、飲食店の居抜き開業費のうち、経費計上できるものやできないものについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
あきらかに経費として認められないものや、不正をしたものを除き、居抜き開業時にかかった費用は、少しでも多く経費計上しておくべきです。
そうすることで、開業時の負担は軽減され、飲食店として良いスタートを切ることにつながります。