居抜き物件で飲食店を開業しようとする方の必須知識として、“減価償却”、“耐用年数”に関することが挙げられます。
きちんと減価償却ができなければ損をする可能性がありますし、耐用年数は居抜きでの建物や設備取得において欠かせません。
今回は、居抜き物件における減価償却や耐用年数に関することを中心に解説します。
居抜き物件の減価償却はどのように計算すればいい?
減価償却の計算方法には、定額法と定率法の2種類があります。
多少計算式は異なりますが、どちらの計算方法でも支払うべき減価償却費、耐用年数に変わりはありません。
定額法は、同じ額を費用として計上し続ける計算方法で、定率法は初年度に大きな額を計上し、年々減少していくという計算方法です。
また、減価償却を計上する為には、必ず償却率が必要になります。
資産の耐用年数に応じて償却率は決まっていて、耐用年数の期間もまた、資産によって細かく定められています。
居抜き物件における減価償却でポイントとなるのは、どのようなタイミングから耐用年数を計算するかです。
居抜き物件の場合、物件を取得した日ではなく、事業をスタートさせて店舗を開店させた日を、資産を取得した日とします。
そして、もう1つのポイントは、資産の元々の耐用年数をどのように計算式に入れるのかということです。
例えば、元々耐用年数が6年の設備があり、すでに3年経過した状態で、居抜きによって取得するとします。
このような場合、まず6年という元々の耐用年数から、経過した年数を差し引きます。
今度はその年数に、0.2をかけます。
こちらの計算方法で、居抜きによって取得した資産の耐用年数を割り出せます。
上記の場合は、6-3×0.2で3.6年となります。
ちなみに、小数点は切り捨てになるため、こちらのケースでは3年が居抜き物件で取得した設備の耐用年数ということになります。
居抜き物件における減価償却の注意点とは?
先ほども解説したように、減価償却では資産ごとに定められている耐用年数が非常に重要です。
居抜き物件の場合は、建物だけでなく複数の設備をまとめて購入し、取得することになるため、減価償却が難しくなります。
もし、1つ1つの設備の詳細が分からないのであれば、もっとも長い耐用年数が全ての設備に当てはまることになり、税金を多く支払わなくてはいけなかったり、経費として計上するまでに時間がかかったりと、色々面倒になります。
そのため、居抜きで物件や設備を購入する際は、契約時点で各設備の耐用年数が分かるように、譲渡目録という書類を作成してもらいましょう。
譲渡目録を利用することで、1つ1つの設備を正確に減価償却することができ、手間もかからず税金を多く支払う心配もなくなります。
居抜きの際は細かい耐用年数も把握すべき
居抜きの際は複数の設備を一気に取得する可能性が高いため、同じカテゴリの資産でも、細かい耐用年数を把握しておくべきです。
例えば、居抜き物件で取得することが多い机やイスなどの耐用年数です。
これらの資産にも、もちろん耐用年数が定められていますが、何で作られているかによって、耐用年数は変わってきます。
建物が鉄筋コンクリート造なのか木造なのか、はたまたレンガ造なのかによって、耐用年数が違うのと同じ考え方です。
事務机や事務イス、キャビネットについては、金属で造られているものに15年という耐用年数が定められています。
そのため、もし居抜きによって店舗を開店させた時点で5年経過していたとしても、計算するとまだ耐用年数は6年残っていることになります。
ただし、こちらが金属製以外の事務机、事務イス、キャビネットであった場合、8年というまた違った耐用年数が定められています。
したがって、同じように居抜きによって店舗を開店させた時点で5年経過している場合、計算すると耐用年数は3年ということになってしまいます。
同じカテゴリの資産でも、居抜き物件で取得する設備の耐用年数にはこれほどの違いがあるのです。
取得する設備が何でできているかは、内見の際にしっかりチェックしておきましょう。
意外なものにも耐用年数が存在する
一般的には設備という認識があまりないものにも、耐用年数が定められているケースがあります。
代表的なものをいくつか紹介すると、まずマネキンが挙げられます。
こちらは、飲食店ではあまり見られませんが、居抜きでアパレルショップやブティックショップを経営しようと考えている方であれば、取得する可能性が多いにあります。
マネキンにはあまり設備というイメージはありませんが、集客をするにあたって重要なものとして、設備にカウントされています。
ちなみに、マネキンの耐用年数は2年です。
また、時計にも耐用年数が定められています。
居抜きでどのような事業を行う場合でも、時計は必要不可欠です。
こちらには10年という耐用年数が定められていて、れっきとした減価償却の対象資産として認められています。
居抜き物件の耐用年数は、経過した年数を把握することばかりに気が行きがちですが、事前に減価償却の対象資産となるもの、元々の耐用年数を把握しておくのも大事なことです。
まとめ
ここまで、居抜き物件における減価償却、耐用年数に関することをいくつか解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
スムースに居抜き物件の減価償却を実施したり、耐用年数を把握したりするには、内見の際にすべての建物や設備をくまなくチェックする必要があります。
また、前オーナーや不動産会社から譲渡目録を受け取るなど、必要なものを準備することも忘れてはいけません。