飲食店を居抜き開業する際には、銀行融資などの方法で資金調達をするケースがほとんどです。
また、このときには居抜き物件取得費などの開業資金だけでなく、“運転資金”もしっかりと調達しなければいけません。
今回は、運転資金の概要や金額、内訳や計算方法などについて詳しく解説したいと思います。
運転資金の概要
開業資金が飲食店を居抜き開業するための初期費用であるのに対し、運転資金は飲食店を日々経営し、それを継続していくのに必要な資金のことを指しています。
居抜き開業だけに限らず、飲食店は開業してから経営が軌道に乗るまでに、最低でも半年はかかると言われています。
つまり、開業から半年間は、赤字の状態が続くのが一般的だということです。
そのため、居抜き開業をする時点で、相応の運転資金を確保しておかなければ、開業直後から経営が困難になることも十分に考えられます。
運転資金の金額の目安
先ほども少し触れましたが、これから飲食店の居抜き開業をするのであれば、赤字状態になることが予想される半年分は、あらかじめ運転資金を用意しておくべきです。
ただし、運転資金を開業資金と同じように調達する場合、銀行融資で丸々半年分を確保するのは、現実的には厳しいと言えます。
一般的には、多くても3ヶ月分程度の融資が限界です。
そのため、調達方法としては、最低3ヶ月分程度の運転資金を貯蓄によって用意し、残りの3ヶ月分を制度融資や創業融資、または助成金や補助金などでまかなうことをおすすめします。
また、必要な運転資金の金額ですが、目安は600~1,000万円程度と考えておきましょう。
もちろん、居抜き開業する飲食店の業種によって多少金額は変わってきますが、上記の金額を確保できれば、開業直後の厳しい経営状況も乗り切れる可能性がアップします。
運転資金の内訳
飲食店の居抜き開業に伴って必要になる運転資金は、変動費と固定費の2つで構成されています。
変動費は、飲食店の売上高によって日々変動する経費であり、固定費は売上高に関係なく、毎月同じ金額の経費を指しています。
内訳に関しては、それぞれ以下の通りです。
変動費 | 材料費、水道光熱費、通信費(電話代、郵便代、切手代など)、人件費、販促費、消耗品費、新聞図書費(店舗に置く雑誌購入費など) |
固定費 | 賃料、交通費、福利厚生費、店舗損害保険料、借入返済費、リース料(POSレジ、システム利用料など)、支払い手数料(税理士報酬など) |
変動費としてもっとも金額が大きいのは、従業員を雇用するための人件費と、食材を調達するための材料費です。
また、開業直後は売上の見込みが立ちにくいため、毎月同じ金額がかかる固定費はなるべく抑える必要があります。
運転資金の計算方法
飲食店の居抜き開業で確保すべき運転資金の目安は、600~1,000万円程度と解説しましたが、より正確に把握するためには、以下の計算を順番に行うことをおすすめします。
・想定売上を決定する
・原価率を仮決定する
・売上原価を計算する
・経費総額を計算する
・売上原価と諸経費を合計する
想定売上を決定する
まず、客単価から月にどれくらいの売上を達成できるか予測し、計算します。
原価率を仮決定する
原価率を仮決定します。
原価率とは、売上に占める原価の割合であり、こちらの数字が小さければ小さいほど手取りの収入は増えることになります。
例えば、居抜きでカフェを開業しようとする方が、1杯500円でコーヒーを提供する場合に、コーヒーを作る豆などの原価が150円であれば、150÷500=0.3で原価率は30%となります。
ちなみに、飲食店における一般的な原価率は30%前後とされているため、正確な数字を算出するのが難しいという場合は、一旦30%という数字を仮設定することをおすすめします。
売上原価を計算する
売上原価とは、売上に対し仕入れなどでかかる原価の金額を指しています。
最初に計算した想定売上に、仮設定した原価率をかけることで算出できます。
例えば、想定売上が月150万円で、原価率が30%の場合は、150万×30%=45万円が売上原価となります。
経費総額を計算する
飲食店を居抜き開業し、経営していくにあたって必要な月経費の総額を計算します。
具体的には、人件費や通信費、賃料や水道光熱費、広告宣伝費や消耗品費など、変動費、固定費にかかわらずすべての経費を書き出し、最後に合計します。
売上原価と諸経費を合計する
最後に、売上原価と経費総額を合計します。
この段階で算出された金額が、正確な1ヶ月の運転資金の金額ということになります。
ちなみに、こちらは1ヶ月分の運転資金額であるため、事前に用意すべきなのはその6ヶ月分、つまり6倍の金額です。
まとめ
ここまで、飲食店の居抜き開業時に用意すべき運転資金の金額や内訳、計算方法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
飲食店の居抜き開業において、無事に店舗を開業させることは、あくまでもっとも近い目標に過ぎません。
本当の目標は、開業直後から順調に来客を増やし、素早く経営を軌道に乗せることであり、そのためには運転資金が欠かせません。