居抜き物件での飲食店開業を目指す方は、実際に店舗を営業することをイメージしながら、内見時に隅々まで店内をチェックする必要があります。
また、このとき忘れずにチェックしたいポイントとして、居抜き物件における厨房の形状や動線が挙げられます。
詳しく見てみましょう。
居抜き物件における厨房の形状は主に4種類
居抜き物件で飲食店を開業するにあたって、厨房は命とも言えるポイントです。
また、厨房の形状には、主に以下の4つの種類があります。
まずは、それぞれの特徴を押さえておきましょう。
・直線型
・L型
・二列型
・アイランド型
直線型
直線型は、居抜き物件の厨房としてはもっともコンパクトな形状です。
作業動線は横のみであり、冷蔵庫やシンクなどの一列に収まるため、配置によっては動線が長くなることが考えられます。
一方で、カウンターのみの物件であれば、こちらの形状がもっとも調理と接客を効率良く行えます。
L型
L型は、アルファベットのLの形に設備が配置された厨房です。
L字の角を中心として、左右に設備が振り分けられていることから、居抜き物件における厨房の中では、もっとも作業動線が短いとされています。
二列型
二列型は、前後に設備が配置されているタイプです。
コンロなどの設備を配置する側、配膳をする側といったように、作業を振り分けることが可能です。
作業動線は前後左右となり、多くのオーダーをさばいていく場合にはスペースが確保できるため、その分作業効率も良くなります。
アイランド型
アイランド型は、いわゆる”見せる厨房“であり、メインの厨房で半調理したものの仕上げを来客の前で行うというタイプです。
演出効果が高く、個室がある居抜き物件などで見られることがあります。
居抜き物件を選ぶ際に意識したい厨房の動線
居抜き物件を選ぶ際は、前述した厨房の形状だけでなく、作業がしやすい動線になっているかどうか、より細かくスペックをチェックする必要があります。
もし作業効率が悪いと感じるのであれば、別の居抜き物件を探すか、もしくは内装工事によって手を加えることをおすすめします。
具体的に、どのような作業における動線をチェックすべきなのか見てみましょう。
下処理⇒加熱処理⇒配膳⇒提供
ストックの下処理から加熱、配膳、提供という作業をスムーズに行うためには、まず通路幅が60~80cm(1人で調理する場合)程度必要であり、冷蔵庫など食材がストックされている場所のすぐ近くにシンクがあるのが望ましいです。
シンクがすぐ近くにあれば、下処理の際に出るアラを捨てたり、包丁を洗ったりする動きがスムーズになります。
また、フードプロセッサーやミキサーを使用するのであれば、コンセントが近くにあるとより便利です。
そして、焼く、揚げる、煮るといった加熱処理を行う設備はなるべくまとめて配置し、1つのダクトでカバーできるようにすべきです。
もちろん、それらの設備の近くには、完成した料理をいったん置いておける配膳スペースもある程度必要になってきます。
下膳⇒洗浄⇒片付け
居抜き物件の厨房を選ぶ際は、調理や提供の動線だけでなく、下膳や洗浄、片付けの動線もチェックする必要があります。
下膳の動線におけるポイントは、できる限り配膳の動線と被らないようにすることです。
あまり広くない店舗では、厨房の出入口付近でぶつかりそうになっている従業員の方を度々見かけますが、このようなレイアウトはリスクが高いため、おすすめできません。
たとえ厨房が狭くても、配膳の出し手と下膳の場所は分けるようにしましょう。
また、下膳コーナーの下にはシンクがあり、スムーズに洗浄や片付けに取り掛かることができるような形になっていなければいけません。
飲料提供⇒下膳
居酒屋や焼肉店、焼鳥店など、飲料の提供が多い飲食店では、厨房においてドリンクコーナーを独立させる必要があります。
そうしなければ、食事の提供、下膳との動線が混乱し、作業効率が悪くなってしまいます。
また、飲料の提供と下膳をスムーズに行うためには、ドリンクコーナーにおけるビールサーバーのタンク、ガスボンベなどをきちんと収納しなければいけません。
こちらがはみ出していることにより、作業動線が長くなってしまう可能性があります。
その他、製氷機もすぐ近くに設置されているかどうか確認すべきです。
ちなみに、居抜き物件の厨房に設置された製氷機には、さまざまなサイズがありますが、もっとも適切なサイズは席数の1.5倍とされています。
例えば、席数が10席の店舗であれば、15kgの製氷機がもっとも適していることになります。
まとめ
ここまで、居抜き物件を選ぶ際に意識したい厨房の形状、動線について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
居抜き物件は、ついつい綺麗さや設備の多さ、造作譲渡料の安さなどで選んでしまいがちですが、実際営業するとなると、厨房の形状や作業動線はかなり重要になります。
また、あまりにも作業効率が悪いとなると、開業後に莫大な工事費用がかかるおそれもあるため、注意してください。