居抜き物件を賃貸する際には、入居時に“造作譲渡料”を支払うのが一般的です。
しかし、中には造作譲渡料が一切かからない居抜き物件も存在します。
今回は、これから初めて居抜き物件を賃貸しようとする方に向けて、造作譲渡料が無料の居抜き物件で考えられる6つの理由について解説したいと思います。
造作譲渡料の概要
居抜き物件に残存している内装や厨房設備、什器などを買い取るため、入居時に支払う費用のことを造作譲渡料といいます。
居抜き物件の所有者は貸主（オーナー）ですが、居抜き物件における内装や設備などの所有者は、これまでその物件で店舗を経営してきた前の借主です。
そのため、居抜き物件を借りる際には、貸主との賃貸借契約とは別に、前の借主と造作買い取りの契約を結ばなければいけません。
また、造作譲渡料の金額については、居抜き物件の立地や集客力によって決定することが多いです。
造作譲渡料が無料の居抜き物件で考えられる理由6選
居抜き物件で賃貸契約を結ぶ際、造作譲渡料が一切発生しない場合には、以下のいずれかの理由に当てはまっていることが考えられます。
・賃料滞納などで原状回復工事ができなかった
・店舗を経営する場所として適していない
・管理会社の経験不足
・居抜き物件ではなく残置物件
・貸主がトラブルを回避している
・他の費用が割高になっている
賃料滞納などで原状回復工事ができなかった
店舗の原状回復費用には、貸主が借主から預かった敷金が充当されるのが一般的です。
しかし、前の借主が賃料を滞納したことなどが理由で、貸主が敷金を使い果たしてしまうと、原状回復工事ができないことも考えられます。
また、このような物件は、当然内装や設備を残した居抜き物件としてしか貸し出すことができず、貸主は一刻も早く賃料を確保するために、造作譲渡料無料で入居者を募集することがあります。
店舗を経営する場所として適していない
前店舗が開業してすぐに閉店し、居抜き物件として入居者が募集されている場合、前店舗の経営がうまくいかなかったことが予想されます。
その上、造作譲渡料も無料となると、より上記の説が濃厚になります。
よって、このような居抜き物件を見つけた際は、入居費用の安さだけで飛びつこうとせず、前店舗の閉店理由などを詳しく調べることが大切です。
管理会社の経験不足
居抜き物件には、貸主と借主の他に管理会社も関わっています。
しかし、管理会社の中には、居抜き物件の取引経験が少ないところも多いです。
また、そのような管理会社は、居抜き売買についてどのように取り決めれば良いのかわからず、前の借主における造作譲渡の権利を放棄させ、新しい借主には現状有姿で引き渡す代わりに、一切クレームを受け付けないという雑な取引をしてしまうことがあります。
このようなケースでは、一切造作譲渡料を支払うことなく居抜き物件に入居できますが、売主（前の借主）にとっては非常に酷な話です。
居抜き物件ではなく残置物件
不動産会社のサイトなどで、造作譲渡料無料の居抜き物件を見つけた場合は、きちんと“居抜き”と表記されているかを確認しましょう。
このような物件は、居抜き物件ではなく“残置物件”である可能性があります。
本来、居抜き物件とは、そのまますぐに飲食店などの経営を始めることができる状態の物件を指していますが、中には原状回復がされていないだけで、厨房機器などは前の借主に持ち出されている物件も存在します。
このような物件を残置物件と呼び、居抜き物件と間違えて賃貸してしまうと、入居後の費用負担が大きくなる上に、開業までの時間もかかりやすくなってしまいます。
貸主がトラブルを回避している
店舗物件の貸主の中には、居抜き売買を良く思っていない方も少なくありません。
このような貸主は、「造作譲渡料が高い」「内見のときにはあった設備が持ち出されている」といった、居抜き売買特有のトラブルに巻き込まれたくないと考えています。
また、居抜き売買を嫌う貸主の中には、造作譲渡料という金銭の授受を伴わない居抜き売買であれば、トラブルに巻き込まれるのを回避しやすいと考える方もいます。
結果、前の借主は、造作譲渡料無料の居抜き売買のみ許可されることがあります。
他の費用が割高になっている
造作譲渡料が一切かからない居抜き物件の中には、賃料や敷金といった他の費用が相場より高額になっていることがあります。
つまり、造作譲渡料を無料にすることで、割安感を演出しているということです。
もちろん、こちらはあくまで不動産会社や貸主が入居者を集めるための工夫であり、違法な行為ではありません。
そのため、借主は事前に賃料や敷金の相場をチェックし、納得した上で賃貸契約を結ぶ必要があります。
まとめ
ここまで、造作譲渡料が無料の居抜き物件で考えられる6つの理由について解説しましたが、いかがでしたでしょうか？
造作譲渡料は、時に数百万円にも上ることがあるため、できる限り安く抑えるに越したことはありません。
しかし、造作譲渡料無料の居抜き物件を見つけた場合には、一度冷静になり、どのような理由でそうなっているのかを考えたり、不動産会社に質問したりすることをおすすめします。
