居抜き物件の売却には、スムーズな受け渡しや閉店コストの節約、造作売却代金の取得などさまざまなメリットがあります。
ただ、注意点を押さえておかなければ、買主との間でトラブルが発生することも考えられます。
今回は、そのようなことがないように、事前に押さえておきたい注意点について解説します。
居抜き物件の売却対象になるもの
居抜きで物件を売却する際、売主に所有権があるものに関しては、基本的に売却対象になります。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・取り付け物、床、壁、天井、家具などの内外装の仕上げ
・厨房、空調などの設備、機器
賃貸の場合、建物の基礎などは売主に所有権がないため、売却することはできません。
レンタル品、リース品に関しても、同じ理由で基本的には売却対象にはならないため、どれが所有物でどれがレンタル品・リース品なのかについては、あらかじめチェックしなければいけません。
具体的には、以下の設備や機器にレンタル品・リース品の可能性があります。
・ビールサーバー
・冷蔵ショーケース
・ドリンクサーバー
・コーヒーメーカー
・おしぼりウォーマー など
ちなみに、レストランやバーといった業態の店舗には、店内にピアノなどの楽器を設置しているところもありますが、こちらは“調度品”の1つにカウントされるため、売却の対象になります。
居抜き物件の売却対象にならないもの
たとえ売主に所有権があるものであっても、居抜き売却時の売却対象からは除外されるものがあります。
具体的には、以下のようなものです。
・食材
・飲料(酒類を含む)
・調味料
閉店する飲食店には、多くの食材や飲料、調味料などが余っていることも多いですが、これらは基本的には売却できません。
なぜなら、上記のものを売却した場合、買主が居抜き物件に入居した後、衛生面での問題が発生したときに、責任の所在がわからなくなる可能性があるからです。
また、同じような理由で、紙ナプキンなど来客に提供する消耗品も、売却せずに売主が処分することをおすすめします。
居抜き物件の売却における注意点
上記の他、居抜き物件の売却をする方は、以下の点に注意しましょう。
・貸主の許可について
・買主の価格交渉について
・売り出し期間について
・設備や機器の売却について
貸主の許可について
当然のことですが、賃貸している物件を居抜きで売却する場合は、貸主の許可を取らなければいけません。
また、賃貸借契約では、貸主への物件返還時、原状回復をするのが一般的です。
つまり、造作や設備を残したままの退去は、そもそも認められない可能性があるということです。
よって、売主は居抜き物件の売却を決断する前に、賃貸借契約書の内容を確認したり、貸主に相談したりといった準備をしなければいけません。
買主の価格交渉について
居抜き物件を売却する際は、あらかじめ不動産会社などの専門業者に査定を依頼します。
ただし、このとき算出された金額はあくまで査定額であり、実際同じ価格で売却できるとは限らないため、注意しましょう。
また、必ずと言って良いほど、買主からは価格交渉が行われます。
よって、売り出し価格と実際の売買価格に差が出ることも、ある程度覚悟しておきましょう。
売り出し期間について
居抜き物件の売り出しから売却までにかかる期間は、一般的に1~3ヶ月程度です。
ただし、以下のケースに該当する場合は、こちらより時間がかかることも予想されます。
・特殊な間取りであるケース
・設備や機器の数が少ない、老朽化が激しいケース
・売り出し価格が相場と乖離しているケース
レイアウトが特殊な居抜き物件は、あまり多くの買主に注目されないため、どうしても売り出し期間が延びやすくなります。
また、古い設備ばかり揃っていたり、明らかに相場より売り出し価格が高かったりする場合も、スムーズな売却を実現するのは難しいでしょう。
設備や機器の売却について
居抜き売却において、本来は売れるものであっても、場合によっては売却対象から外れる可能性があるため、注意しましょう。
例えば、前入居者から無償で引き継ぎ、使用していた厨房設備や機器などは、通常売却することが可能ですが、所有権が売主にない場合は売却できません。
所有権の所在に関しては、賃貸借契約に記載されているため、確認しておきましょう。
また、すでに支払いが完了しているリース機器であっても、保守点検などを継続するために、リース会社との契約が継続している場合があります。
この場合、所有権はリース会社に残っていることが多く、売却できない可能性が高いため、注意が必要です。
なお、リース機器に関しては、リース会社に一定金額を支払うことで、所有権を得ることができる可能性もあります。
まとめ
ここまで、居抜き物件の売却における主な注意点について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
スムーズかつ好条件での居抜き売却が成立するのは、あくまで売主が売却対象物を把握し、適切な売却活動を行った場合にのみ言えることです。
特に工夫をしなくても、居抜きであれば買い手が集まるということではありませんので、注意してください。